「一人ひとりの"やりたい"から広がる思い」(3・4・5歳児クラス にじグループ)

4月当初、色水あそびから広がった染め物あそび。
玉ねぎやなすなど、野菜でいろいろな物を染めて楽しみました。

過去のブログ
「染めもの(幼児クラス/にじグループ)」



ある日の散歩で、以前「ヤマモモで染めてみたい」と言いていた子が、公園にヤマモモが咲いていることに気付きました。
公園のヤマモモを採り、袋に入れて色水を作ってみると、
煮るよりも手で揉んだ方が色が出ていることに気付きました。

次の日、そのヤマモモの色水で毛糸の染め物を行うと、色が濃かったからか毛糸にすぐ色が着いていました。
「こんなに色が付いたってことは、もう白の毛糸には戻らないのかな?」
「水で洗ってみない?」
水で洗ってみると、染まっていたはずの色がすべて落ちてしまいました。
「やっぱり、一日置いておかないと色は着かないんだね」
と失敗から気付く姿もありました。

そのとき、白い毛糸を水道で洗っているお友だちの横で
たまたま水筒のお茶を流していたお友だちがいました。
すると、白い毛糸がお茶で染まっていきます。
「お茶で染まった!」
「瓶にお茶と毛糸を入れて一日置いて置いたらどうなるかな?!」
と不思議に思ったことは自分たちで試してみます。

次の日、お茶で染まった毛糸をみんなの前で発表します。
「この毛糸であやとりをしたい」
と、染めるだけでなく、「それでどうしたいか」も自分たちで発案してくれます。
その発表を聞いて、僕もやりたい、私もやりたいと
今まで染め物に興味を持たなかった子たちも、「やってみたい」と思う気持ちが芽生えてきます。

毛糸を染めたり布を染めたりする中で
何か次の意欲に繋げられないかと担任間で話し合い、
ビー玉や輪ゴムで"絞り"をつけて染めると模様が出来る様子を
保育者がさりげなくやってみることにしました。
すると、子どもたちも
「なにそれ?!おもしろそう!」
と目を輝かせて、保育者と同じように絞り模様を着けていきました。



ちょうど七夕の時期と言うこともあり、
栄養士の先生から七夕のそうめんの話の中に、洋服は糸でできているということを聞きくと、
「つるの恩返しの絵本でも、機織り機で布作っているよね?」
と気づくお友だち。
「じゃあ、毛糸で洋服も作れるのかもしれない!!」
と目を輝かせていました。

次の日、布を使ってぬいぐるみを作ってみたいと話す子がいたので、
おもちゃの機織り機を環境に置いてみました。
大人がやっても難しいものなのですが、
子どもたちは意欲的に集中して布を作り上げていました。
毛糸がなくなると、
「先生毛糸ちょうだい」
というのではなく、
「毛糸がなくなっちゃった!染めないと!!」
と自分たちで毛糸を作り始めます。



しかし、機織り機でぬいぐるみを作るには大量に織らなければならず
しかも、毛糸がなくなると、また染めて…と
何日も時間をかけてやらなければいけないことに
少しずつ興味が薄れ、そのままになってしまうことが増えました。


クラス全体の子どもたちの興味が薄れ始めていたこともあり、担任間で話し合い
もう少し簡単に染められるように"染料"で染めると簡単に染められる
といことを子どもたちに伝えて導入してみると、染め物の興味は再度膨らんでいきました。

染料では、色を自分たちで作ることができ、自然物で染めるより色濃く染められます。



子どもたちも今まで以上に染め物をするようになりました。
再度、「布を染めたら何を作りたい?」かを聞くと
「かばん」
「ランチョンマット」
とそれぞれが見通しを持ってイメージし始めました。
それらを作って、水筒を入れて散歩に持って行ったり、
給食ときにランチョンマットを敷いてみたり。





その姿をみて、他のお友だちも作ってみたい!と広がるようになったり、
「Tシャツをつくりたい!」
とおうちからTシャツを持ってきてくれたお友だちもいました。



染め物の本から、"しぼり"をすると綺麗な模様になることを学んだお友だちは
ビー玉、輪ゴム、ガムテープなどを使って模様を着けていきました。







<考察>
4月当初、不安定な児が多く、一人ひとりを丁寧に関わることを心掛けて保育をしました。すると少しずつ楽しみ始めることができましたが、やりたい思いを実現する方法が分からずあきらめてしまう姿が多くみられました。「こんなことができるかもしれない」と言う思いを子どもたちと一緒に考えるように心がけることで、子どもたちは「やってみたい!」と思いを伝えることができるようになってきたように思います。
しかし、クラス間で子どもたちの思いを共有できなかったり、どうしたらよいかを考えきれていなかったことで、子どもたちのやってみたいを存分に広げてあげることができませんでした。
また、染め物は染まるまでに時間が掛かり、子どもたちの興味が途切れ途切れになることも多かったです。
しかし、子どもたちのやりたいにあふれている今、思いを大切にし、保育者自身も悩んで考えて、一緒に成長していけたらと思います。